(Masaki SURUGA)
ひさしぶりにル・クレジオの『物質的恍惚』のページををめくっていたら、もうだいぶ昔々のこと、エレーヌから渡された買い物メモが出てきた。
エレーヌは、ちょっとしたメモを私に手渡す時、こんなふうに、よく「ねこちゃん」と書いた。なにかで私が困っていて、励ましてくれるような時にも、「ねこちゃん」と呼びかけてくることがあった。
もう、めったに思い出さないことなので、古い本の中から急にこんな昔のメモが出てくると、エレーヌの私への呼びかけ方のひとつだったと、あらためて気づかされ、懐かしい。
このメモでエレーヌが求めてきた買い物は、2,3個のリンゴ、アプリコットいくつか、ミネラルウォーターのコントレックス2ボトル、あまり熟していないミニトマト4つほど、すでに切り分けられているふすまパンなどで、「pour le train(列車用に)」とあることから、フランスにいる時に、おそらく、翌日の列車での旅を控えてのものだろう。この日は、エレーヌと私は別行動をしたものと見え、「Bonne journée dans la nature(自然の中でいい一日を過ごしてね)」とあることから、私は、どこか、森か山だかに出かけたものと思う。
日本でのことではないのがわかるのは、アプリコットを求めていることや、リンゴを2,3個と指定してきているためで、フランスでは、夏などアプリコットが持ち運びに便利な果物としての定番のひとつだし、日本でならリンゴを買う際、2,3個という頼み方はまずしないためだ。
このメモといっしょに、Abbaye de Saint-Guilhem-le-Désert(サンギラン・ル・デゼール大修道院)の博物館の入場券が本に挟まっていたので、 Hérault県にいた時のことかもしれない。
とすれば、エレーヌの次兄のリシャール(Richard Grnac)家族が住むモンペリエを訪れていた時のことだろうか。
リシャールは、山のほうに別荘を持っていたので、私は彼らと山に赴き、エレーヌは別の用事でモンペリエに留まる必要のあった日だったのではないかと思う。
エレーヌと私で共有していた本から、エレーヌ自筆のメモが見つかることは多いが、私宛に書かれたこんなメモは、用事が終わるとふつうはすぐに捨ててしまうので、あまり見つからない。
エレーヌの命日であるハロゥインが間近になるにつれ、また、エレーヌのいたずらが増してきたのかもしれない。エレーヌの自筆で、8年ぶりに、「ねこちゃん」などと聞かされるなど、エレーヌらしいいたずらの最たるものではないか。
末尾には、Gros Baisers.....とあり、日本語でなら「元気でね」と訳すのが妥当な文句だろうが、今は、「大きなキスをいっぱい...」と受け取っておくべきだろうか。
やはり、ひさしぶりに、エレーヌが挨拶を送ってきてくれた、と見たほうがいいのかもしれない。
末尾には、Gros Baisers.....とあり、日本語でなら「元気でね」と訳すのが妥当な文句だろうが、今は、「大きなキスをいっぱい...」と受け取っておくべきだろうか。
やはり、ひさしぶりに、エレーヌが挨拶を送ってきてくれた、と見たほうがいいのかもしれない。
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